サッカーコラム~2014年5月:あきらめの悪い選手

その選手を初めてみたのがいつだったかもう覚えていない。

それでもそのポテンシャルの高さと、
相反する雑さと結果の出なさ、素行の悪そうな態度に

「消えていく才能の一つ」 と

頭の隅に追いやっていたと思う。
本田や香川、長友が出場していた五輪は最悪だった。

オランダを始め、世界の強豪にまったく歯が立たず。
サイドは抉られシュートは好き放題に打たれまくった。
その中で 反撃の唯一の1点をあげたのが彼だった。

それでも”彼”は日の光から遠ざかっていた。

名古屋から、京都サンガに、そして鳥栖へ。

どう見ても没落の一途を辿るようなサッカー人生。
九州の片田舎で、その才能は終わる。

そして2度とJリーグでも代表でも彼を見ることはない。
そう思った人は多かったかもしれない。

だが、彼は、その辺境の地で見事によみがえった。

若いころとはまるで違い、他者をいたわり
チームのためにプレーし、
そして周囲への感謝を表現し、
そのためにゴールを目指す。

最後の1分まであきらめない、
いま、Jで最も諦めの悪いチームと思える鳥栖の粘り強さ

そしてJリーグでは異質な、ロングボールと肉弾戦が主体のサッカー。

その中でも異彩を放つ豊田。

J2だった鳥栖をJリーグに押し上げ、
久しぶりにたった檜舞台。

若いころの彼なら舞い上がるか、謙虚さを失なっていたかもしれない。

今の豊田は、その紆余曲折を胸に秘め、
どの試合も決してあきらめることなく無骨に走り続ける。

近年の代表は確かに巧い選手が多い。
中盤も前線も一定以上のテクニックが求められる。

それでも、岡崎がぜったいに外せないように、
サッカーとは技術の見せ合いではなく、相手との戦いである以上
彼のように闘争心と犠牲心にあふれた強靭な選手が必要だと感じてしまう。


多分に好みやひいき目が入っているとは言え
それでも、


W杯で豊田が走り回る姿を見たい。


苦労に苦労を重ね、転落しそうな中
それでも必死にもう一度昇りつめてきた男の
最後の勇士を、あの舞台で見たい。


そして、もしW杯の舞台で豊田がゴールを決めたのなら、
彼は間違いなく、自分のためではなく
「日本のため」と感謝を口にするだろう。

そんな選手をこそ、応援したくなる。


諦めの悪いチームの中の
諦めの悪い選手。

そんな選手を見れるのもサッカーの幸せ。


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※ この記事は、2014年5月2日にアメブロ「虚言」で書いたものを移しました。

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